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せんそうとへいわ
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終末のカナリア...後編

 

   「・・・時雨」

 「あァ? いつの間に来たのか、今日は早いな」

「マフィアの方に誘われました。うちに来ないかって」

  あの後、少年は、自分はカルコラーレファミリーのボスである閑廼祇徒だと名乗った。その直後に仲間らしき少女が現れ騒ぎ出したため、透離は少し考えさせてくれとだけ告げて姿を消した。

(ファミリーに入るほうが、私の性にはあっているでしょうけど)

 幻術は確かに使える。だが幻術だけでは肉体的に殺すことは出来ない―――今の透離の力では。

 殺し屋などやって来てはいたが、そこまで透離は戦闘能力が高くない。

 そう考えると、あの誘いは透離にとってとてもいいものであるのだが―――透離は迷っていた。

(いつの間に、私は一人で決められなくなってしまったんでしょう)

 ずっと、両親が死んでから一人だった。だが、時雨と出逢ってから―――自分は、時雨に頼るようになってしまったのだろうか?

 

「へェ・・・」

「だから、あの」

 そう言った瞬間、時雨の端正な顔が歪んだ。両手で頭を押さえ、座り込む。

「だ・・・大丈夫ですか・・・?」

「・・・あァ」

 最近、いつも時雨はこうなる。痛いとも苦しいとも言わず顔を歪ませるだけであるから何が起こっているのか透離にはわからないのだが、頭痛が何かであることは確かだ。

(“夢”の中だからどうやって治せばいいのかわかりませんし・・・)

 思わず時雨に手を伸ばすと、時雨は一瞬怯えるように身を引き、立ち上がった。まるで、透離に触れられるのを拒むかのように。

「もう、平気だ。・・・今日はもう帰れ」

「え? でも今来たばかりですし・・・さっきの件のことも」

 時雨は透離の言葉を遮るように立ち上がると、扉を出現させた。

「マフィアの件、受ければ良い。お前には合ってる。それに、マフィアに入ればここに来ることもなくなるだろうしなァ」

「なっ・・・!」

 それはどういう意味だ、と言い返す余裕も与えられないまま、開け放たれた扉へ透離は吸い込まれていった。



 「はぁ・・・」

 翌日、透離はカルコラーレファミリーのアジトにまで出向き、誘いを受けることを伝えた。

 

『ほんとか!? うっわ、すげぇ嬉しい』

 

 彼―――ボスである閑廼祇徒の笑顔が、妙に眼に焼き付いた。

(やっぱり、入って良かったかもしれない)

 時雨のいうとおりに、して良かったと―――そう思う自分がいた。

(入ったことを、伝えないと・・・)

 そう思いながら、透離は眠りへと落ちた。



 バーン、と鍵盤を叩きつけたような大きい音が反響し、それと共に苦しそうな呻き声が聞こえた。

「時雨!?」

 荒い息をして顔を歪ませている時雨を見て、透離は驚きの声を上げた。

「大丈夫ですか・・・!?」

 駆け寄って触れようとした瞬間―――ぱしっ、と手を振り払われた。鋭い眼光が透離を突き刺す。

「しぐ―――

俺に触るな

 いつもとは違う低い声に、思わず透離はビクリと肩を震わせた。

 その姿を見て、時雨はハッとしたように透離から視線を外し、小さく「悪い」と呟いた。

「・・・・・・その、昨日の話・・・ファミリー、入ったのか・・・?」

「あ・・・はい、今日・・・」

「そりゃァ、良かったな・・・・・・もう、ここには来なくて良くなるだろう」

「え・・・?」

 時雨の言った意味が、わからなかった。

(―――ここに、来ない? ・・・私が?)

「それは、どういう・・・」

「そのまんまの意味だ。もう教えることは何もねェし、来る必要がねェ。だから、もうここには来るな―――いや、もう来れない、と言ったほうが正しいか。お前は自分の意思でここに来れているわけじゃねェからなァ」

「どう、して・・・!? 意味が、意味がわからない・・・」

 殴られたような衝撃。身体の芯、内側から何かがぞわぞわと這い出るような感覚。

「う、あ・・・」

「おい、―――

 自分の周りの空気が舞い上がり、髪が銀色に染まっていくのがわかった。

 ―――幻術が、発動している。

「やめろ、透離・・・!!」

「どうして・・・・・・どうして・・・・・っ!」

 声にエコーがかかり、叫び声が“歌”へと変わっていく。

 ―――禍々しい幻が、空間の歪みを創り出している。

(制御、出来ない・・・)

 幻術が暴走している。にも関わらず、どこが冷めている自分がいた。

(このまま全てを巻き込んでしまったら・・・)

―――っ、」

 刹那―――ぐわん、と反転し、透離は床に叩き付けられた。

「は、ぁ・・・・・・っ」

 時雨が深く息を吐いた。どうやら幻術を掻き消されたらしい。

「・・・こんなに成長しているとはなァ・・・・・・やっぱりもう教えられることなんてねェな」

「っ・・・・・・」

「髪、銀色になっちまったな・・・」

 そう言われて初めて、幻術が解かれたにも関わらず自分の髪が銀色のままだということに気がついた。

「力が暴走したから・・・?」

「そうだろうなァ」

 倒れ臥している透離を抱き上げると、時雨は低い声で呟いた。

「お別れだ、透離」

「しぐ、れ―――

 ・・・瞬間、世界が暗転した。



 「もう、二年も経ったんですね・・・」

「あ? ・・・何が?」

「・・・いえ、何でもないですよ」

 はてなマークを浮かべる自分の上司、閑廼祇徒を無視して、透離はテーブルにあるカップに手を伸ばした。

 

 あれ以来、透離は時雨に逢っていない。いくら“夢”へと落ちても、時雨の部屋―――時雨の“夢”には辿り着けず、ただぐるぐると幻想空間を巡り続けた。

 どうして時雨は来るなと言ったのか。どうして自分を“拒否”したのか―――透離には、もう知ることなど出来ない。

 だが―――

 

愛してた、透離

 

 最後にそう言って、柔らかく微笑んだ時雨の顔は―――決して忘れることはないだろう。

 

 巡り巡った“夢”の中で一度、銀色の鳥を見た。あれは確かに幻でも華の夢でもなく―――雨を謡う、銀色の鳥だった。

 

(私も、同じ気持ちでした・・・師匠)

 開け放たれた窓から、風が吹き込んでくる。

 銀色の長い髪を押さえて、透離は口の端をゆるりと引き上げた。

 

(私はあきらめていませんから・・・)

(今度は私の力で、私の意志で貴方の“夢”へと入って見せます)

(だから、また―――あのピアノを聴かせて下さい)

 

 

END



はい、夜零のわけわからんシリーズ終了です。ほんとに意味わからんな。
異世界とか交えるとわけわからんくなります。

あー、あと・・・透離ちゃんと祇徒、なんだかすごくあっさりしているし、この二人に大切さってあるのか? って感じですけど、ちゃんとあります。
なんてったって、この後時雨を失くし、表向きは平気そうにしていても内心はアレな透離ちゃんを、何も知らないにも拘らず支えたのは彼、祇徒ただ一人ですから。そこらへんのことはまた後日、書きたいと思っています。
まあでもそれよりも先に祇徒の過去かロキアの過去か・・・あ、やっぱリコリスかな。リコリスは異世界混じりのめちゃくちゃな過去ではないので。

因みに最後の方の『』は反転すれば読めますよ。恥ずかしくて反転させただけなので。

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