白に近い金髪。染めたにしては綺麗過ぎるその髪が、地面に広がっていた。白い顔、白い腕、白い足。どちらかといえば蒼白い。そう、まさしく死人のような。
(―――当たり前だ、これは死体なんだから)
綺麗な死体だった。見たところ外傷がなく、ひどい顔もしていない。全くの無表情で眼を閉じて死んでいる。確かな年齢はわからないが、恐らく二十代ぐらい。男の死体だった。
「な、なんで……なんで、死体が、こんなところに……」
血の気を失い、呆然とした顔の今井さんの言葉に、イチが苦虫を潰したような表情をして眼を伏せる。とりあえずショック状態の今井さんはここから遠ざけた方が良さそうだ。
「……イチ、とりあえず今井さんを向こうへ」
思った以上に、自分がかすれた声である事に驚いた。これでもショックは受けているようだ。
零がしゃがんで死体をじっと見つめていた。多少驚いてはいるようだが、恐怖よりも好奇心のほうが勝っているようで、ずっと死体を観察している。
一方、樹はさっきから微動だにしていない。今井さん以上にショックを受けているのだろうか、だとしたらやっぱり遠ざけないと。
そう思って、近付いたとき、僕は違和感に気付く。
「……樹…?」
樹は無言だった。無言のまま、ただひたすら死体を凝視している。
(……なんかまずいかなこれは)
とりあえず樹の腕を引っ張り、今井さんとイチのほうへ連れて行く。全くの無抵抗だ。
「零、」
「外傷は全くないけど、血を吐いた跡がある。薬か何かみたいだ」
一応眉をひそめてはいるが、死体を見ても全く平気なようだ。今井さんと同じ女の子として、この反応はどうかと僕は思う。
「この死体、どうする?」
とりあえず精神状態がまともそうな零とイチに尋ねる。イチは困ったようにまた眼を伏せ、零は考えているようだった。
「警察に届けるのが普通だろうけど……正直面倒、かな。子供とは言え詳しい事を聞かれるのは絶対だし……まあ疑われる事はないにしろ、行ってはいけないって言われている森に来た事に関して怒られる事は確実」
「なるほど」
零は警察に届けたくないわけだ。
「確かにね」
イチは迷っているようだったが、零の考えだから賛成だろう。それはきっと今井さんも。二人は零に絶対の信頼を置いているから。
問題は、樹だ。
(樹の意見次第じゃ全てが丸っきり逆方向になってもおかしくない)
だが、予想と反して樹はゆっくりと頷いた。
「警察には届けない」
「……じゃあそうしよう」
樹なら警察に届ける、と言い出しそうだと思っていたから意外だった。だけどそんな事を言ってまた話がごちゃごちゃになるのも面倒だったので、そのまま流す事にする。
警察に届けず死体を放置する、なんて事が良くない事は重々わかっていた。だが、この件は絶対にバレない事も、僕らはわかっていたのだろう。
「とりあえず、森から出よう」
僕の言葉に、よろよろと皆歩き出す。
「この件は、絶対に誰にも言っちゃいけない。良いね?」
―――こうして、僕らは死体を見つけたのだった。
...ⅳに続く
03 | 2024/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
28 | 29 | 30 |
Sex:女
Birth:H7,3,22
Job:学生
Love:小説、漫画、和服、鎖骨、手、僕っ子、日本刀、銃、戦闘、シリアス、友情
Hate:理不尽、非常識、偏見