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せんそうとへいわ
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「夢で遊ぶの、とそれは言った」


「夢に踊れと哀れな人形を操る」


「ここは誰かの夢の中。殺意しかない夢の中」


「ただ、悪夢だけをみて」


 

 ……そう、誰かが言った。


殺意の中で

 


 びしゃり、と血がアスファルトに叩きつけられる。鎌のままの愛架(あいか)を持ち直し、前方を歩く二人
―――(ひじり)交差点(クロス)の背を追った。


(
なーんで、こんな事になったかなぁ)


 歩きながら(あおい)は考える。気が滅入ってくるような、だけど逆に落ち着くような灰色の空をちらりと見やり、淡々と歩く二人を眺めた。


(
あたしたちをこんなところに閉じ込めて、一体何の恨みがあるっていうんだか)


 確かに皆、恨まれてそうな奴ばっかりだけど、とぼやいてみる。


 しかし、この世界に見覚えは無かった。


(
夢はその主を反映した世界―――)


 こんな灰色の空にビルばかりの世界を夢に見る奴なんて、心当たりが無かった。


「ねぇ、」


 蒼の呼びかけに、前を歩く二人は振り向きもしない。


「貴方たちは自分の夢に入った事、あるの?」


「ある」


 聖が答えた。交差点は答えなかったが、小さく頷いたように見えた。


「どんなだった?」


「……私の知っている屋敷。黒塗りの鳥居が幾つも並んだ先の
―――襖を幾つも幾つも開けた先。包帯にまみれたお座敷で、壁は全て本。そんな世界だ」


「俺は何も無い。真っ暗だ」


 なるほどね、と呟く。なんとなく想像が出来た。


「オマエは?」


「あたし? あたしは、夢なんて見ないから」


 …嘘だけど、なんて。自嘲気味に笑った。


 手に持っている鎌が、震えた気がした。


「と、まぁ……夢は自分を反映した世界。自分に似た、自分を景色で表現したらこんな感じ、みたいな空間。そうだよねっ?」


 無言で肯定。


「だったら、こんな世界みたいな奴、心当たりない? どこまで言っても高層ビル、灰色の都会。延々と曇り空。真っ白の世界よりも、自分を持っていないようなそんな
―――


「……自分を持っていない(・・・・・・・・・)…」


 聖が繰り返す。何か引っかかるものでもあったのだろうか?


 聞き返そうとしたが、急に曲がり角から飛び出して来た複数の人影に遮られてしまった。


「!」


「おおっ、人や!」


「だねーっ」


「んな事言ってる場合じゃないでしょッ…!! まだ追っかけて来てるのよ!」


 あれ、と思わず呟く。


 夕月(ゆうき)と、見た事あるかもしれないオレンジ色の男と、知らない女の子。


「そうやった、早く逃げんと……!!


「逃げる? ……あ」


 黒い影の塊。その三人はあれに追っかけられてたのかー、などと呑気に考えつつ、愛架を構えた。


「あんなん、逃げるより殲滅したほうが早いじゃん」


「出来るならそうしたいけど、こっちからは近づけないんだよーっ」


「え?」


 夕月の言葉に疑問を抱く。同じように疑問に思ったのか、聖と交差点も夕月を見た。


「だって、ほら」


 
―――刹那。


 一瞬の、衝撃波。


「ッ……!!!


 皆が飛ばされていくのが見えた。


(
いや、あたしも吹っ飛ばされてんのか、)


 避けられなかった
―――何故。これも夢の主の意図ってわけ? 皆をばらばらにさせたかった?


 そんな思考も、思いっきりビルの壁に叩きつけられて、フェードアウト。


 名前を呼ぶ愛架の声を聴きながら、蒼はゆっくりと意識を手放した。


 

 


 人が降って来た。


 半ばこの非現実的な夢の世界にも慣れて来た折崎(おりさき)茉莉(まつり)は、冷静に目の前で起きた事実を心の中で短い文章にした。しかも二人、と付け加える。


「……はぁ」


 地面とごっつん★ なんて事にならないよう、寸前で自身の能力で転移させ、ゆっくりとアスファルトの上に横たえさせたが。


「私の射程範囲内で助かったわ」


 茉莉の能力は空間移動
―――つまり、テレポートである。しかし、触れたものか自身の直線上にあるものでなければ転移させられない。降って来た二人は丁度、茉莉の直線上だったのだ。


 こんな非常事態は元々慣れていたが、この世界に来てしまってからさらに心の臓が強くなったな、と思いながら
―――いや、もう一時間以上もこの世界を彷徨っていればそうなるか、と思い直し―――二人の少女を軽く揺さぶる。


「おーい、大丈夫?」


 恐らく何らかの攻撃を受けて吹っ飛ばされたのであろう、と推測する。この世界は明らかに自分たちを狙っていた。


(
何の為に、誰が……)


 ずっと考えているが、茉莉の頭脳でもわからなかった。そもそも、このような夢の世界の主など心当たりが無いし、確かに恨まれるような事はやっているが、こんな仕打ちに遭わせるような奴は思い浮かばない。


(
大方、巻き込まれたクチか)


 良くある事だ、と片付けられるのは、やはり非日常に慣れてしまった者だからか。と、自嘲気味に考えているうちに、一人が咳き込み始めた。ようやく気がついたらしい。茶髪の少女のほうだった。もう一人の、茶髪の少女よりももっと幼い、少女と言うよりか幼女というべき女の子はまだ気絶したままだ。


「うっ……」


「気がついた?」


 このパターンが茶髪の少女にとって本日二度目である事は露知らず、茉莉はそう少女に声をかけた。


「ここは、」


「あんた降って来たのよ。大方、なんかに攻撃されて吹っ飛ばされたんでしょう? 怪我は?」


「あー……えっと、大丈夫よ」


「そう、なら良かった。私は折崎茉莉、あんたは?」


「茉莉、ね。名前は、シロ。そっちの子は、夕月」


 シロ、と名乗る少女に手を貸し、茉莉は詳しい状況を聞きだした。


―――ふーん、なるほどね。あんたが出くわしたのは、聖と交差点と……恐らく還神の蒼って奴ね。話を聞いた事がある。予想はしてたけど、やっぱり私は巻き込まれたってわけか。そっちが目的だろうなぁ」


「え、えっと……?」


「その夕月って子はわからない。そもそも、あの三人やそのルークって奴、あともしかすると他にいるかもしれない人間
―――そいつらを自身の夢の中でまとめて攻撃して、何の意味があるのかしら。私は夢に詳しくないから更にわからないけど……ったく、もっと情報をこっちに寄越せっての。いつまで経っても眼が醒められないじゃない」


「あの、ちょっ、ちょっと」


「やっぱり夢の主を探すしかないか」


「あたしは《夢喰い(メア・イーター)》を探したほうが良いと思うなっ」


 ばっ、と振り返る。


 透き通るような髪を揺らしてくるくる踊る少女
―――夕月が、にこりと茉莉に向かって微笑んだ。


「あんた、いつの間に起きて
―――


―――そうね、情報を求めるならばそれが正しい選択かも」


「待って、《夢喰い》って何よ?」


 知らないらしいシロが、尋ねる。


「私も詳しい事は知らないけど、夢を司り、夢を操り、夢を喰らう存在
―――


「それぞれ一人ひとりが持つ、枝分かれした夢の世界を自由に行き来し、その夢の世界から様々な異次元に足を踏み入れることが出来る存在、だね~っ! 夢に《夢喰い》は必要不可欠、夢の中で存在しないなんて有り得ないんだよぉっ」


「あんた、詳しいのね」


「もうちょっと詳しく《夢喰い》について教えてくれる? 場所を特定する」


 茉莉のその言葉に驚いたのか、シロが眼を丸くして茉莉の顔を見つめる。


「そんな事出来るの?」


「一応、可能よ。私の頭脳を舐めないでくれる?」


 そう言って、茉莉はにやりと微笑んだ。





>>04に続く

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