その“色”に俺は触れた。
everytime you kissed me
私は彼に触れられるたび、音を出して震えました。
*
喰われて見ようと思った。自分の夢がどんなモノなのか――― そして、“彼”はどういうモノなのか。
「へぇ・・・・・・君が、例の神様?」
「ふーん、君が例の“夜”ねー」
お互い偽善者染みた微笑を貼り付けて対面しあう。こいつが時雨のナカにいる夜って奴。
(面白そうだけど気に食わないかも)
――― 時雨のほーが、よっぽど好き。
「で、君が夢を喰らわせてくれるんだ?」
「そのつもりだけどー?」
「でも、そんなすんなりアイツに喰らわせてやるほど僕は優しくないんだよね」
反転した“彼”は、不釣合いな不敵な笑みを浮かべた。
*
キスのように甘く柔らかく解けるような温かさを、彼は私にくれました。薔薇のような芳しい香りや希望を歌わせてくれました。
貴方の音は私の音。夢のような時間を彼は私にくれました。
・・・・・・でも、いつの頃からか、彼の音が聴こえなくなりました。
*
――― 夢に、堕ちていく。
「アイツは大切なものを二つも失って、もう何も無い」
「なに、それ」
「そのままの意味だよ。だからアイツは主人格として生きる事を選んだ。そっちのがラクだからね」
「普通逆じゃない?」
「僕らにとっては違うんだよ」
アイツの音は、枯れてしまったんだ。
「あの忌まわしき二人の少女のせいでね。始まりは《灰色の少女》、終止符は《銀色の少女》」
「・・・・・・誰の事」
「そんなに知りたい? でも教えてあげない、君には必要の無いものだしね、黙って時雨の餌になりなよ。・・・とは言っても、昔と違って夢を喰らっても相手はココロを失わなくなってしまったんだけどね」
「・・・? 時雨が主人格になったから?」
「そうだよ。僕が主人格だった頃は、違ったのに。本当なら君の事だって《喰らい尽くして》やりたいよ。時雨を揺らがせるものは邪魔なゴミだ」
「じゃああの子はどーなの? いつも引っ付いてるちっちゃな女の子。それと、あたしの周りにいる子たち」
「あの子らはどうでもいいんだ。特に、君の言うところのちっちゃな女の子。あんなに懐いているのに可哀想な話だけど本当の意味で時雨はあの子に興味が無い。本当に、本当の意味でね」
――― その点、君は違う。
「《灰色の少女》や《銀色の少女》ほどではないけど、君もそれなりの影響力は持ってる。久しぶりに会う人外・・・・・・自分と同じだからかな。ま、君と僕らじゃ格が違うけど」
「そりゃどーも」
「君なら《蒼色の少女》になれるよ」
「ははっ、それはおもしろそーだね」
「でもまあ、君が期待するほどの存在にはなれないよ。アイツには《銀色の少女》の影が纏わり続けているから」
*
彼の音は枯れてしまいました。まるで色褪せた銀色の薔薇のように、枯れてしまいました。だから私の奥底にまで届かなくなりました。私にキスのような感覚が与えられなくなりました。
私はそれでも貴方の傍に居続ける事にしました。彼の最後の言葉に涙を零してしまったから。彼の音は枯れて私には聴こえなくなってしまったけれど、でもまだ失ってしまったわけではないから。
・・・・・・彼がまた咲き誇るまで、私は彼の代わりに、彼のために、悲しみを口ずさみ続けるのです。
彼の、最後の言葉。
『愛してた、透離』
*
「ほんとにアイツは丸くなったよね。ねえ、どうして今日アイツが君を喰らおうとしたのか、わかる?」
「・・・? 何、どういう事」
「アイツは僕の事が嫌いなのに、わざわざこんな事遠回しに頼んじゃって。まあ、君じゃなくて《銀色の少女》だったらもっと必死に――― いや、寧ろ自分から動いただろうけど。所詮、アイツにとって君はその程度の存在さ」
少し、むっとした。そりゃあ、あたしよりその《銀色の少女》のほーが大切なのかもしれないけど、別にんな事嫌味ったらしく言わなくたって、わかってるよ。
「で、何なの」
「僕は夢を操る者。アイツは夢を喰らう者。君の悪夢を喰らって吉夢を贈ろうっていう魂胆さ」
「へ・・・・・・?」
「今日が何の日か忘れたの? だって今日は君の――― 、」
*
俺たちと出逢った三色の色。灰、銀、蒼。そして俺らは黒、彼女は白。
全部に触れて、俺は変われる。
「灰色には感謝を」
「銀色には愛情を」
「蒼色には祝福を」
「黒色には憎悪を」
「白色には音色を」
・・・・・・さて、《もう一人の黒》は《蒼色の少女》に《祝福》と言ってあげたかな。
END
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Birth:H7,3,22
Job:学生
Love:小説、漫画、和服、鎖骨、手、僕っ子、日本刀、銃、戦闘、シリアス、友情
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