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せんそうとへいわ
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 それは、ヴェンタッリオファミリーに送られた、とある任務を巡るお話。



彼女と彼らの調

 「何・・・この任務、」
 紫俄葵の元へ届けられた、次の任務の内容。麗が大変な思いをしないように、任務の内容は麗よりも先に葵のほうへと回すように手回しされているため、まだこの任務の内容は麗に伝わっていない。

(こんなもの・・・ボスにやらせられるわけがない)

 ――― 即座に、決心する。この任務は、他の者に・・・・・・特に、麗に気付かれないように遂行させようと。

 ・・・・・・それを見ていた者がいた事も知らずに。



 ソルト・ヴァルヴァレスと蓮漣秦は、ヴェンタッリオファミリーのアジト内を連れ立って歩いていた。
「そういえば・・・・・・今日、葵の姿を見てないような」
「葵? ああ・・・確かに」

葵なら任務に向かったよ

 不意に後ろから声がして、ソルトと秦は揃って肩を震わせ振り向いた。
「昴!」
 ・・・後ろには、やけに冷めた顔をした桐城昴が立っていた。
「任務って、どういう事だ? 葵に任務は入っていないはずだが」
「麗ちゃんのを肩代わりしたんだ」
「・・・・・・姉さんの?」
 訝しげな二人に、昴は抑揚の無い声で説明する。
「ソルトは気づいていると思うけど、葵は麗ちゃんに危険な任務が回されないように、任務が来たら先に自分のところに来るよう手回ししていたんだ。
 そして今回、ちょっと危険な任務が入ったみたいで、麗ちゃんの代わりに向かったみたいだよ。僕にもよくわからないけどね、盗み聞きしただけだから」
「そんなの知らないぞ!?」
 秦の声が廊下に響き渡る。ソルトは渋い顔で唸った。
「ソルトは知っていたのか?」
「・・・・・・ああ、」
 秦がくっ、と唇を噛み締める。
「この事、姉さんには・・・・・・」
「知らせない方が良い」
「でも・・・!」
「秦の言いたい事はわかるよ。どれだけ危険な任務だったのかは知らないけど、葵が心配だ」
「だけど俺も昴も葵の気持ちを尊重したい。俺らも麗を危険な任務に向かわせたくないしな」
「それに何より・・・・・・」

 ――― 麗ちゃんの辛い顔は見たくないでしょ?

「・・・・・・葵がどんな任務に向かったのか、どこに向かったのか・・・手分けして調べよう。姉さんに気付かれないように」
「ああ」
「わかったよ」

 そして三人は、動き出す。



 レン・ウェルヴァーナは、紫俄葵を探していた。朝から姿が見えないのだ。
(任務は入っていないから、いるはずなんだけど・・・・・・な、)
 だが、いくら探しても見つからない。

――― ま さ か 。

「麗様、」
「何ですか?」
 レンは麗のいる部屋へと向かうと、本を読んでいた麗に話しかけた。
「麗様に任務、来た?」
「いいえ? もうしばらく来ていませんが・・・・・・この前の大きな抗争に関するもの以来」
「・・・・・・・・・・そっか、」
 そのまま立ち去ろうとするレンに、麗は慌てて静止の声をかける。
「ま、待って下さい・・・・・・何かあったんですか?」
「・・・いや、何も。麗様は気にしないで」
「レ、レン!」
 今度は呼びかけにも応じず、レンは麗の部屋を出た。そして迷う事なく、歩く。

 ――― 向かう先は、葵の自室。



 どんよりとした曇り空の下、葵は列車に乗り込んだ。厚手のダークブルーのコートは脱がず、指定席へ座る。
(・・・・・・、)
 コートの中には二本の短刀と一丁の拳銃が入っている。その存在を確かめるように、葵はコートの上から拳銃を撫でた。

(――― 麗)

 もしかするとソルトや昴、レンには気付かれたかもしれないな、と妙に冷め切った頭で思った。
(まあ、構わないけど)
 麗にばれてさえいなければ、それでいい。

 一人で任務に向かうときの自分は、恐ろしく残酷で歪んでいてそして、惨めだ。

(今回の任務に関するものは、全て排除した)
 愛用の刀も銃も置いてきて、ずっと使用していなかった短刀と予備の拳銃を持って来た。任務に向かう事を決心してからは、麗と顔を合わせていない。
(抜かりは無いはずだ)
 麗に気付かれてはならない。自分は――― いや、ファミリーは皆――― 麗を護るためだけに動いているのだから。

「絶対に遂行させてみせる」
 ――― 麗を、ヴェンタッリオを護り、誇るために。



To be continued
...

前編後編モノです。今回のテーマは、「ファミリーがボスのために奮闘する」話。
ネタバレすると、最後まで麗は何も知らされません。
・・・・・・ちょっと楽しくなって来た←
次回も楽しみにしていて下さいなw

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