テーブルに置いていた携帯が、震えていた。珍しくメールではなく着信、零からだ。
「もしもし」
『あぁ、夏婁? 遅いよ』
苦笑混じりの零の声。携帯を押さえながら、時計を見る。午前十一時半過ぎ、あれから帰ったのが二時近かったから、九時間は寝ていた事になる。
「ごめん、寝てた」
『あ、そう。大丈夫だった? 一応、皆に電話かけてるんだけど。夏婁が最後。相当酔っていたし、帰り遅くなっちゃったし。申し訳ないなと』
「有難い事に、全く平気。二日酔いもないし。まぁ、ちょっと寝すぎた感はあるけども」
『そうか、なら良かった。なんか頭がぼんやりしててあんまり憶えてないんだけど……駅まで送った事は憶えてるんだけど、記憶が曖昧だし心配になってね。皆、二日酔いとかはいるけど大丈夫みたいだったし安心だよ』
「そっか、それなら良かったね。また、昨日みたいに集まれると良いな。なんか、また企画してよ」
『あぁ、勿論する。面白い事を企画してやるよ』
「それは楽しみだ。じゃあ、またね」
『ん、また』
通話終了。もう当分、零と電話することはないだろうと思いながら僕は通話履歴を消した。
ふと、棚に置いてある蝋燭を見つめた。以前、誰かからお土産で貰った蝋燭だ。一度も使っていないため、既に埃を被って飾りと化している蝋燭。
蝋燭の炎。影。悲鳴。
すっ、と僕は蝋燭から眼を逸らすと、顔を洗いに洗面所へ向かった。
こうして、僕らは忘れていく。怖かった事、どうでもいい事、失ったものの事を。
あの日僕らが忘れたものは、一体何だったのか、今となってはわからない。
あの日、少女が負ったものは、果たして何だったのか。
―――鏡に映った僕の、もっとずっと奥。かつての少女の姿が見えた気がした。
終
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